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【2ch】世にも奇妙なニートの物語 第1話『俺だけの才能』

更新日:

「世にも奇妙なニートの物語」
2chでおもしろいと絶賛されたID:UcMrseUd0さんの作品。
http://hayabusa.2ch.net/news4vip/kako/1360/13605/1360581143.html
ニートをテーマにした4作からなるオムニバス形式となっています。

 
タモリ「ニート」

タモリ「働き盛りの年齢であるにもかかわらず働かない人々、を指す言葉として」
タモリ「今や世の中に広く浸透しています」
タモリ「生活するにはお金がいり、お金を得るためには働かねばなりません」
タモリ「にもかかわらず、彼らはなぜ働かないのか? あるいは働けないのか?」
タモリ「もしかすると、我々が予想だにしない奇妙な背景が潜んでいるのかもしれません」
タモリ「──さて、今回は幸か不幸かそんな奇妙に巻き込まれてしまった」
タモリ「四人のニートの奇妙な物語をお送りします」

 

第1話 『俺だけの才能』

 
< 家 >
テレビ『空飛ぶ円盤が多数目撃されているこの町では』
テレビ『町おこしのために、円盤のマスコットキャラ“エンちゃん”を作り~』
ニート「アホくせぇ、どうせ町内会の自作自演だろうがよ」
ニート「もっと面白い番組ねえかな~」
コンコン
ドア越しに会話する母子。
ニート「なに?」
母「ご飯作っておいたから、あとでチンして食べてね」
ニート「あいよ~」

 
母「あと……」
母「ちゃんと仕事探してる?」
ニート「探してるよ! パソコンでも仕事は探せるんだよ!」
母「そう、分かったわ、ごめんね」ササッ
ニート「……ちっ」
ニート(あ~あ、このままじゃまずいよなぁ)
ニート(かといって、一度この生活に浸かっちまうと、もう働くなんて考えられねえ)
ニート(朝早く起きて、日が変わるぐらいに帰る生活とか、やってられっか)
ニート(なにか俺にしかできないような仕事でもあれば──)
ニート(それこそマイペースでできるんだがな。なんたって俺にしかできねえんだから)
ニート(だけど、んなもんあるわけねえ)
ニート(俺がこなせる仕事は、だいたいの人ができるだろうからな……)

 
数日後──
コンコン
ニート「なに?」
母「居間に料理用意しておいたからね~」
ニート「あ~い」
居間に行くニート。
ニート「!?」
ニート「な、なんだぁ!?」

 
ニート(なんかやたら料理が豪勢なんだけど……)ゴクッ
ニート「これなんか、すげぇいい肉なんじゃねえの? 多分」
ニート「盛り付けとかも手間かけすぎだろ……」
ニート「…………」モグモグ…
ニート「うん、うまい」
ニート(どうしたんだ、いったい……)
ニート(俺へのエールのつもりなのか?)
ニート(っつっても、なぁ……働く気にはなれねえや)
ニート(ごめんよ、母さん)

 
さらに──
ニート(朝っぱらから、部屋の外から怒鳴り声が……うっせえな)ムニャ…
ニート(ん、親父と母さんがなんか喧嘩してる)
父「会社に……会社に行かなければ!」
母「ダメよ! そんな体で! 熱が39度もあるのよ!?」
父「うるさい! 会社に行かなければぁっ!」ダダダッ
母「ああっ、もう!」
ニート(つくづく社畜してんなぁ、親父……)
ニート(ま、そのおかげで俺はこうしてニートしてられるんだが)
ニート(定年も近いだろうに、いくらなんでも会社に命捧げすぎだろ……)

 
ニート(あれからというもの──)
ニート(母さんの料理はますます豪勢になり)
ニート(なんかもう、近々料理の大会でも開かれるのかって勢いだ)
ニート(カリスマ主婦でも目指してるんだろうか?)
ニート(一方、親父も前にも増して帰りが遅くなってる)
ニート(残業代もつかないだろうに、なにが楽しくて残業してるんだか……)
ニート(一応子供として心配は心配だが、俺になにかをいう資格はないのは自覚してる)
ニート(ご苦労なこった、二人とも)

 
そんなある日のこと──
< 家 >
黒服「こんにちは」
母「失礼ですが……どなたですか?」
黒服「詳しくは話せませんが、私は政府の密命を受け、動いている者です」
母「せ、政府!?」
黒服「こちらのご子息がニートだとうかがったのですが、事実ですか?」
母「は、はい……」
黒服「彼と話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」
母「ど、どうぞ……」

 
ニート「な、なんだよ……アンタ!? 突然俺の部屋に入ってきやがって!」
黒服「君はニートだね?」
ニート「だ……だったらなんだよ!?」
黒服「君は今、まったく働いていないということだね?」
黒服「働き口を探してすらいない、家のことですらまともにやっていない」
黒服「そういうことだね?」
ニート「そ、そうだよ! 悪いかよ!」
黒服「よろしい」
黒服「さっそくだが、君を今から連行する。時間がないのだ」
ニート「えっ、そんな、ちょっと待って……」

 

 
黒服に連行された先は、さまざまな装置が並ぶ施設だった。
ニート(……どこなんだ、ここは?)
白衣「やぁ、いらっしゃい」
ニート(ムリヤリ連れてきて、いらっしゃいもないだろ……)
白衣「君の基本的なデータはすでに見せてもらっているが──」
白衣「君は今まったく働いていないとのことだが、本当かね?」
ニート「ま、まぁ……そうだけど」
白衣「ほ、ん、と、う、に?」
ニート「ホントだよ! 無職ですってウソつく方が珍しいだろ!」
白衣「ほぉう、これは驚いた! 現代日本にまだ君のような人間がいるとは!」
白衣「これは急がねばならん! さっそく君の身体検査を行う!」
ニート(な、なんだってんだよ……!)

 
白衣「仕事は探していた?」
ニート「いいえ」
白衣「働いていないことに関して、罪悪感は?」
ニート「あんまり」
白衣「機会があれば、働きたいと思う?」
ニート「いや……全然」
白衣「自分に向いてる仕事をパッとイメージできる?」
ニート「すぐには思いつかないです……」
白衣「ふむふむ……」カリカリ…
ニート(なんだってんだよ、いったい)

 
全ての検査が終わった時には、すでに真夜中になっていた。
ニートは研究施設に泊まることになった。
ニート(何十だか何百だか質問に答えさせられたり)
ニート(髪の毛を切られたり、皮膚をちょっと剥がされたり、血を抜かれたり)
ニート(まるで実験動物みたいな扱いだ)
ニート(しかも、なんのためにやってるのかの説明は一切ないし……)
ニート(どうなっちまうんだ、俺は……)
ニート(助けて……だれか助けて……)

 
翌日、白衣がニートを呼び出す。
白衣「検査結果が出たよ」
ニート「…………」ゴクッ
白衣「ありがとう……! 君は救世主だ!」
ニート「はい?」
白衣「実は今、地球上に恐ろしい病気が蔓延している」
白衣「一度使命感にとらわれると、働かずにはいられなくなるという病気が……!」
白衣「あえて名づけるとするなら、労働中毒というやつだ」
白衣「おかげで、今世界中で過労死に向かう人間が続出している」
ニート(そういえば……心当たりはあるな。ウチの親父と母さんもそうだった)
ニート「な、なんでそんな病気が蔓延してるんです……?」
白衣「異星人の仕業だ」
ニート「へ!?」

 
白衣「これは一部の国の、さらにごく一部の人間にしか知らされていない情報だが」
白衣「少し前、宇宙から飛来した円盤が世界中にウイルスをばら撒いたのだ」
ニート(マジか……。そ、そういえば……円盤がどうたらテレビでやってたな)
ニート「なんのために異星人はそんなことを……!?」
白衣「理由は色々考えられるが、最終的には地球人を奴隷にでもしたいのだろう」
白衣「労働中毒になった人間に、強烈な使命感を与えれば何でもやるだろうからな」
ニート「なるほど……」
白衣「だが、君のおかげで地球人に希望が見えた!」
白衣「血液検査で判明したのだが──」
白衣「君はおそらく世界で唯一、このウイルスに耐性を持つ人間だったのだ!」
白衣「自堕落だから耐性があるのか、耐性があるから自堕落なのかは分からんが」
白衣「とにかく! 君の自堕落さが世界を救うことになる!」ガシッ
ニート「はぁ、どうも……」
ニート(褒められてるんだか、貶されてるんだか……)

 
ニート(なんかよく分からないけど──)
ニート(このまま上手くいけば、俺は世界の救世主になれるってことは分かった!)
ニート(まったく働かず! 世界を救う!)
ニート(これはまさしく俺の……俺だけの才能!)
ニート(これこそが世界で俺だけができる仕事だったんだ!)
ニート(見ろ! 俺をニートだとかいって見下してる世の中の野郎ども!)
ニート(俺は働かないんじゃない……働かなくても英雄になれるんだ!)
ニート(頭と体をフルに使っても、食い扶持稼ぐので精一杯なお前らとはちがうんだ!)
ニート(ハハハハハッ!)

 
白衣「ではさっそくワクチンを作るための血液の採取を……」チクッ
黒服「動かないで下さいね」ガシッ
ニート(へへへ、これで俺も英雄かぁ……)
白衣「血をい~っぱい採取して、ワクチンをい~っぱい作らないと」
黒服「絶対に動かないで下さいね」ギュッ…
ニート「──ん、白衣さん? いくらなんでも……血を抜きすぎじゃねえか!?」
ニート「しかも黒服さん力入れすぎだって……痛いってば! 指が食い込んでるよ!」
ニート「聞いてんのか!? 二人とも……目つきおかしいって!」
ニート(ま、まるで……こみ上げる衝動を抑えきれないみたいに……!)
白衣「ワクチン、ワクチン、ワクチン、ワクチン、ワクチン、ワクチン、ワクチン」ガクガク
黒服「絶対に……動かないで下さい……絶対に……」ギュウウ…
ニート「うっ……」
うわぁぁぁぁぁ……!

 
~おわり~

 
第2話 『ゴキブリ』
第3話 『家事手伝い』
第4話 『無職を減らす方法』

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